もしもダンガンロンパだったら(第十話



キーンコーンカーンコーン


『オマエラー、おはようございます。朝です、7時になりました!起床時間ですよ~!
さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』


朝。もはや聞きなれてしまったモノクマのアナウンスを無理やり聞かされた私は、いつものように起きて
いつものように着替えて、いつものように寝癖を整えて、いつものように食堂へと向かった。

そしていつものようにみんなと挨拶を交わし、いつものように2馬鹿とキューが攻防を繰り広げ、いつものようにギーンは来ない。
そしていつものようにルイが朝食を運び、いつものようにルイの作った朝食を皆で頂く。

全てがいつも通り。

・・・だと思いたいのだけれど。

昨日のギーンに見せられたフランス語で書かれた何とかファイルのせいで、私の目から見るルイの動きがいつもと違っているように見える。
勿論、行動仕草口調何一つこれまでと変わらない。

琶月
「(・・・やっぱりいつも通りだよね。)」

そう思い込んで、今日も出口に繋がる手がかりを探そう。
そう思った時だった。

モノクマ
「あのさぁ~。すべてがいつも通りだなんて、そんなツマラナイ事。僕が許すと思ってるの?」
琶月
「うぇっ!!?モノクマッ!!?」

気が付けば食堂の端っこにある椅子の上にモノクマが座っていた。
私が叫ぶと全員モノクマの存在に気づき皆が皆身構えた。

キュー
「モノクマ!!一体何しに来たの!!」
ジェスター
「端っこに座ってるよ。ぼっちだーーー!!!」
モノクマ
「あのさぁー、僕は皆を受け入れる気持ちはあるのにそうやって皆が断絶するから僕はボッチになってるんだよ?
そうやって仲のいい人だけつるんで、気に入らない奴は排除する。そうやって世の中は戦争が起きるんだよ。」
キュー
「い、いやそれは・・・。」
ルイ
「正当な発言に聞こえるかもしれませんけれど、戦争に置き換えれば私達はモノクマから先制攻撃を受けた事になりますよ。拉致監禁されて殺害を強要されていますから。」
キュー
「正義は我らにありーーー!!!」
ガムナ
「気持ちの切り替えはえぇっ!?」
ディバン
「おい。ただ雑談しに来た訳じゃないんだろう?何しに来た。」

ディバンがモノクマに詰め寄る。
モノクマがケタケタと笑い、体を上下に伸び縮みさせる。その伸縮っぷりに機械で出来ているのか、はたまた本当に動く人形なのか分らなくなってくる。

モノクマ
「そうだとも。僕はまた君たちにプレゼントをする事にしたんだ。」
ジェスター
「プレゼント?お金?」
ガムナ
「エロゲなら大歓迎だ!!」

即座に私とキューでガムナの後頭部を殴った。

モノクマ
「うぷぷぷぷ。体育館にオマエラの名前が書かれた封筒があるから、誰かに見られる前に早く取りに行った方がいいよ。
そこには、オマエラが絶対に知られたくないヒミツが書かれているからね。」

絶対に知られたくないヒミツ・・・?
即座にキューがモノクマに突っかかった。

キュー
「秘密が何だっていうのさ!」
モノクマ
「まぁまぁ~。とりあえず早く見にいってよ~。ボクだってみんなの秘密を探し出すの大変だったんだから~。」

・・・・嫌な予感がする。

ヘル
「おっ、良い事思いついたぞ。」
テルミット
「何を思いついたの?」
ヘル
「俺が皆の秘密を破り捨ててやろう。モノクマの策なんかバッキバキにしてやるぜ。」
ギーン
「信用出来んな。」
ヘル
「うおっ!?てめぇ、どこから出てきやがった!?」

いつの間にかギーンが食堂の入り口に立っていた。
モノクマとギーンに挟まれるかのように私達は食堂の中央に立っていた。

ギーン
「破り捨てるという名目で各々の秘密を見る気かもしれないぞ、こいつは。」
ボロ
「秘密秘密って言うっすけどよ・・・。別に恥ずかしい秘密知られるぐらいなら俺は何だっていいぜ。」
モノクマ
「あっそ。それなら取りに行かないで放置してればいいよ。僕は封筒に名前の書かれた人以外が読んでもぜ~んぜん気にも留めないからね。」

こんな事言われると気になって仕方がない。
モノクマが言う皆の秘密っていうのは当然私の秘密も含まれているのだろう。
そこにはどんな秘密が書かれているのか?

モノクマの策に誘導されるかのような動きを取るのは癪だけれど、どんな秘密が書かれているか分らないヒミツを
他の人の誰かに読まれるのは怖い。だって、そこには何が書かれているのか分らないから。
モノクマの策はいつも巧妙だ。いつも私たち自らに疑心暗鬼の気持ちを

ギーン
「俺は行くぞ。ついでに貴様らの秘密も読んでおいてやろう。」
キュー
「ギーンはモノクマの味方なの!?」
モノクマ
「ばれたかっ!?」
キュー
「やっぱり!!!」
ギーン
「フン、あいつと一緒にしないで貰いたいな。だがそう思いたければそう思えばいい。」

そういうとギーンは一人勝手に体育館へ向かって歩き始めた。
・・・どうする?このままだと本当にギーンが全員の秘密を呼んで朗読しそうな勢いだ。

モノクマ
「・・・琶月ー!僕らの計画を邪魔される前に早く体育館へ行けー!」
キュー
「琶月もモノクマの仲間だったんだね!!」
モノクマ
「ばれたかっ!?」
琶月
「うぇっ!!?何で!!?いくらなんでも安すぎる芝居じゃないですか!!」

キュピル
「・・・・少しは疑え。キュー。」

これまでずっと黙っていたキュピルが口を開く。

キュピル
「どうせこの先、秘密ことが気になって気になって仕方がなくなるのであればさっさと見に行った方が良い。その方が後腐れしないで済む。」
ヘル
「そうだな、さっさと体育館に行って俺が皆の前でビリビリに破いてやる。」
モノクマ
「破いたら倍にしてまた体育館に置いちゃうよ。」
ヘル
「そしたらその倍になったものをビリビリに破く。」
モノクマ
「破いたら倍にしてまた体育館に置いちゃうよ。」
ヘル
「そしたらその倍になったものをビリビリに破く。」
モノクマ
「破いたら倍にしてまたたい・・。」
キュー
「だぁあー!無限ループしててうるさいよ!!」

キューがワァッーと叫ぶ。

キュピル
「行こう。」

キュピルがギーンの後に続くかのようにして食堂を出ていく。

ルイ
「キュピルさんが行くなら私も。それでは。」

ルイが笑顔を私達に向けると、キュピルの後を追って行った。・・・・この状況で笑顔?

ジェスター
「あ、待って~~。ファン!早く行くよー!」

そういうとジェスターは丸まって座って何事も無かったかのように寝ていたファンの背中に飛び乗った。
ジェスターが背中に飛び乗ると、ファンはゆっくり目を見開いた。
そしてそのまま無言のまま食堂から出て行った。すっかり飼いならされている。
次にガムナとボロ、ディバン、キュー、テルミットと続いていき、とうとう私一人だけが食堂に残ってしまった。

琶月
「えーとえーと・・・ま、まってくださーーーーーーーーい!!」

私も慌てて食堂から飛び出していき、体育館へと向かって走って行った。






・・・・・。

・・・・・・・・・・。


体育館へたどり着くと、モノクマが行っていた通り中央に12個の封筒が落ちていた。
それぞれに自分たちの名前が書かれている。

この中に・・・秘密が?

でも、一体どんな秘密が書かれているのか。

全員恐る恐る封筒に近づき、自分の名前が書かれている封筒を手に取った。
別に誰かに許可を取る必要もないので、私は早々に封筒を開けて中身を確認した。
そして手紙の中身に書かれている文面を見て私は驚愕した。

『琶月の秘密:輝月の下着を盗んで頭にかぶりながら寝た事がある。」

琶月
「うええぇぇっ!!!?わ、わあああああ!!」

私は即座に秘密の書かれた封筒を破り捨ててバラバラにし、そしてポケットの中に突っ込んだ。

琶月
「(ど、ど、ど、どうしてモノクマはこんな秘密を!!?っていうか、これ無理やりお酒を飲まされて酔っちゃった時の勢いだしーーーーーー!!)」

勿論私は普段からこんな事をする変態じゃない。・・・・さすがにここまではしない。
ただ、本当にやってしまった事があるのは事実・・・・。
問題なのはどうしてモノクマがこんな秘密を知っているのか。

同じように、封筒の中から取り出して紙に書かれている文面を見て次々と驚愕の声を上げる人達。

キュー
「な、なにこれ!!?」
ファン
「驚きました。この秘密を知っていたとは。」
ジェスター
「あーーーーーーーーーーーー!!!!プライバシーの侵害ーーーーーーーーーーーーーー!!!訴えるーーーーーー!!!!」
テルミット
「ど、どうしてこ・・これ・・を・・・・。」
ボロ
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!これ琶月の物まねっす。」
ガムナ
「あああああああああああああああああwwwwwwwwwwwwwwwちょwwwwwwwwどうしてしってるwwwwwwwwwww。こんな感じか。」
琶月
「全然違いますっ!!!こうです!!ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
キュー
「琶月五月蠅い。無視。」
琶月
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ボロやガムナは相変わらずふざけて場の緊張感を取り除こうとしているが、本人達も顔が若干ひきつっている。
この場で微動だにしていないのはキュピルとギーンだけだ。

モノクマ
「うぷぷぷ。凄いでしょ?どうして僕が知ってるのか皆不思議に思ってるよね?」
ヘル
「あったりめぇだ!!」
モノクマ
「ここで皆さんに重大発表でーーーす!!!」
ヘル
「あ?」
モノクマ
「今日から24時間以内に殺人事件が起きらなかった場合~!この皆さんの秘密を世界中に言いふらしまーーす!!
ネット広告、テレビ広告、選挙カー、もう色んな手を使って皆の秘密を言いふらしちゃうからね。」
キュー
「あ、あんたのいう事なんて誰だって聞きやしないよ!!」
モノクマ
「はれはれ?本当かな?それなら安心だね。効果がなくても僕は言い触らすから。別にいいよね?だって効果がないんだもん。」
キュー
「い、いや・・それは・・・・。」

何だかんだ言ってキューも流石に言い触らされるのは困るらしい。

モノクマ
「僕も飽き飽きしてるんだ。次の殺人事件が全然起きなくて暇してるの。くだらない皆の日常生活なんか見せつけられちゃってさ。
さ~ってと、それじゃ言い触らす準備でもしてこよっかな~。バイバイ~~!」

そういうとモノクマは物凄い速度でどっか飛んでいきその場から去って行った。
そして辺りに漂う沈黙と閉塞感。

ヘル
「・・・・だ、誰も秘密を守るために誰かを殺そうとなんて考えてねぇーよな?もしいたら俺がぶっ殺すぞ。」
キュー
「あの2馬鹿とヘルが怪しい。」
ガムナ
「ひでぇぞ!」
ヘル
「俺もかよ!」
キュピル
「いい加減にしろ。そうやってお互いにお互いを疑心暗鬼にさせるのがモノクマの手だ。そうやって仲間を疑い本当に殺人を犯す危険性を生ますのを
お前らは望むのか?」
ルイ
「・・・・・・・・・・・・。」
琶月
「・・・・そ、そうだよ。そうだよ!たかが恥ずかしい秘密じゃん!こんなのちょっと我慢すればきっとすぐ皆忘れるって・・・・。」
ギーン
「勘違いするな。貴様の価値観や基準なんぞ、他人には全く意味のない基準だ。いるかもしれんぞ?この中には人を殺してでも秘密を守り通したくなる奴が。」

すぐにキューが走ってギーンの元まで行き襟首を掴んだ。

キュー
「どうしてあんたはそうやって人を煽るのが好きなのさ!!」
ギーン
「ふん、殴りたいか?殴りたければ殴ってみろ。」

ギーンがそう言うと、キューは即座に拳を振り上げて殴り掛かろうとした。だがその前にキューの後ろから2馬鹿が羽交い絞めにする。

ガムナ
「お、お、落ち着こうぜ!?な!?」
ボロ
「善意からの押さえつけに見えたこのさりげなくボディタッチ!!完璧っす!!」

即座に二人はキューにボコボコにされた。

ファン
「それで、秘密は公表するのですか?」
ジェスター
「公表するなら琶月からだよ?」
琶月
「うっ・・・。・・・・・・。」

確かに、物凄く言いたくはないけど・・・・。
全員が隠し通した結果、また殺人事件何かが起きちゃったら・・・・。

そんなのは絶対に嫌だ。

琶月
「わ、わ、私の秘密はぁぁーー!」

裏声になりつつ叫ぼうとした瞬間。

キュピル
「俺は言わないぞ。」

ピシャリとキュピルがその場の流れを切った。
ギーンならともかく、よりによってキュピルに流れを切られるとは思っていなかった。

ギーン
「奇遇だな。俺も言うつもりはない。
テルミット
「・・・・その・・・・僕もちょっとこれに関しては・・・。僕だけの秘密にしたいんです・・・・。」
ディバン
「・・・・すまないな。大人には一つや二つ、墓場まで持っていくしかねぇ秘密があるんだ。」
ヘル
「どいつもこいつもへっぴり腰だな。俺の秘密はケツからプロテイン飲んだことがある事だぜ。」
キュー
「うわっ!!汚い!!!」

ボロ
「つーか何でそんな所からプロテイン飲もうとしたっすよwwww」

ゲラゲラと笑い転げる2馬鹿と体育館の端っこまで退避するキューとジェスター・・・・とルイ。女性人は幻滅のようだ。
しかし、そうしているうちにキュピルとギーン、そしてテルミットやディバンは体育館から出て行ってしまった。

琶月
「あ・・・・・。」

・・・・朝からこんな事になってしまうなんて。
昨日の事でキュピルさんに謝りたかったけど・・・・そういう雰囲気じゃなくなってしまった。

その後、体育館では秘密を共有しようとヘルが叫んだが聞くだけ聞いて他に秘密を公表する人は誰もいなかった。
というか、ヘルの秘密は果てしなくどうでもいい秘密だった・・・・。

琶月
「(むしろ聞かなければよかった・・・・・。)」


・・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



昼。


何だか校舎内の雰囲気がおかしい。
全員気持ちに余裕がない。

そわそわしながら意味もなく廊下を歩き続けるキュー。

脂汗をびっしりとかきながら壁によりかかるテルミット。

机に突っ伏しながら寝ているのか落ち込んでいるのか分らないボロとガムナ。

いつもは元気なジェスターも今は大人しい。

・・・・それぞれがそれぞれ重たい雰囲気を醸し出していた。

それもそうだ。絶対に知られたくないヒミツを、今から数十時間後にはモノクマの手によって世界中に公表されてしまうのだ。
私やヘルみたいに知られても恥を書くだけならともかく・・・・。

その中に、人を殺してまで知られたくないヒミツを抱えている人がいるとしたら・・・・?

ギーンの言ったセリフが頭の中で渦巻いでいる。

琶月
「(・・・そんな秘密・・・ある訳ない!!人を殺してまで守り通さなければいけないヒミツなんて!!!)」

誰も誰かを殺そうとはしないはずだ。
信じている。私はそう信じ続ける・・・・。

琶月
「(お腹減った・・・ラーメンでも作ろうかな・・・・。)」

食堂から入れるキッチンは、ルイでなければ作れそうにない霜降り高級牛肉に高級っぽそうな食材から、私のために置いてあるようなインスタントラーメンまで何でもおいている。
朝はルイが作ってくれるけど、昼と夜は基本的に自炊だ。時々ルイが作ってておこぼれを貰う事はあるけれど・・・・。

キッチンの中に入って、食糧庫から適当にインスタントラーメンを引っ張り出す。
袋の中に入ってあるパリパリの乾燥麺をお湯の中に入れて、茹でた後に袋の中に一緒に入っている粉末調味料を入れれば出来上がりという
至極簡単なインスタントラーメン。街に降りればジュースを買うのと同じくらいの安価な価格で買える。

水を入れた鍋をコンロの上にのせて火をつける。温められた水がボコボコと沸騰し始める。
頃合いと思い袋をあけて麺を湯に入れる。
そして袋をゴミ箱に入れようとしたその時。

キュピル
「琶月。」
琶月
「ワッ!!!」

思わず手に持っていたインスタントラーメンの袋をゴミ箱の外に落としてしまう。

琶月
「キュ、キュピルさんでしたか・・・。びっくりさせないでください・・・・。」
キュピル
「昨日来なかったのは単純に寝過ごしただけか?」
琶月
「あ・・・・えっと・・・その。すいません・・・寝過ごしました・・・。起きたら午前1時で・・・。」
キュピル
「そうか。あの件の話だが、もう殆ど終わってしまった事だけ伝えておこう。」
琶月
「うぇ!?終わったって!?一体何を!?」
キュピル
「機会があったら教える。ただ、それまでは何を聞かれても答えないって事だけは言っておく。それじゃ。」

そういうとキュピルは一方的に話を打ち切りその場から去って行ってしまった。
思わず茫然としてしまい、ハッと意識が戻ってきたときは鍋が吹き零れし火が消えたことを知らせるアラーム音が鳴り響いていた。

琶月
「(・・・嫌われちゃった訳じゃ・・・ないですよね・・・・ぐすん・・・。)」


・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。


それから夕方を迎え・・・・

夜を迎え・・・・。


深夜を迎えた。

その間、特に私は何かをすることもなくただ校舎の中を歩き回ったり
小腹がすいたら食堂でちょっとつまみ、そして夕方には自室のシャワーを浴び・・・。
そして倉庫に置いてあったパジャマを着てベッドに入る。


今日は何時にも増して皆の顔が険しかった。


私も、自分の秘密が世間にばらまかれるのは嫌だ。
ましてやあんな秘密を世界中に言いふらされたら、この先ずっとその事をネタに引っ張りまわされるのは目に見えている。

言い触らされるのを阻止したければ誰かを殺すこと。


だけど、そんなことはしない。

人の命程大事な秘密なんて・・・・ない。

せいぜい恥ずかしい思いをするだけ。


ただそれだけのことのはずなんだ・・・・。



私は嫌な胸騒ぎを感じつつも、ベッドの中に潜り込んで無理やり寝ようとした。
寝るのに数十分・・・どころか一時間半ぐらいかかった気がする中、無理やり眠りについて明日が訪れるのを待った。



大丈夫。



明日になったらきっと何とかなってるはずだ・・・・。



そう念じながら私は眠りについた。





・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





キーンコーンカーンコーン


『オマエラー、おはようございます。朝です、7時になりました!起床時間ですよ~!
さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』


朝だ。


運命の朝に違いない。


琶月
「(あぁ・・・今日から私皆から変態って罵られるんだぁ・・・気が重い・・・・。)」

ものすご~~~く気怠い体を起こして、いつものように寝癖を整え、いつもの服を着て・・・
そしていつものように食堂へと向かっていった。

食堂には、キュー、ルイ、ファン、テルミット、ディバン、そして2馬鹿がいた。

ファン
「おはようございます。」
ガムナ
「ヒンヌー!おはよう!」
琶月
「朝からヒンヌーって言うなぁー!」
ボロ
「インドはヒンドゥー教っていう宗教を崇めているらしいっすね。」
ガムナ
「ヒンニュー教!?」

朝から早々にガムナの後頭部を叩くキュー。

キュー
「あ~あ。今日も今日で気が重たくなるね。」
ルイ
「そもそも、お二人が朝早く食堂に来られるなんて珍しいこともあるんですね・・・・。」

ルイが2馬鹿を指さす。

ガムナ
「あぁ~・・・俺ちょっと秘密ばらされるのが嫌で嫌で中々寝つけなかったんだよ・・・。」
ボロ
「同じくっす。心臓ばバクバクしたけど、まぁしゃあないっすね・・・・。」

どうやら二人とも私と同じ心境にいたようだ。
しばらくすると、誰かが食堂に入ってきた。時間から見てそろそろキュピルやジェスターがやってくるだろう。
そう思いながら振り返ると、予想外な事にギーンが食堂に入ってきた。

ギーン
「・・・・・・・・。」
キュー
「あっ!!一体何しにきたの!!煽りに来たなら出て行って!」
ギーン
「黙れ。」

ギーンは何も言わずにそのままキッチンへと入って行った。
・・・・ただ単純にお腹が減っただけなのだろうか?

キュー
「もしかしたら皆のご飯に毒を入れるつもりかもしれない!私ギーンの事見張ってくる!」
ファン
「毒なんてどこで手に入るのか気になる所ですがお願いします。」
ガムナ
「大方気のせいだな。」

それから30分ぐらい経過してようやくキュピルとジェスターが食堂にやってきた。
二人は相変わらず遅刻してきた事に対して何一つ悪びれた仕草を見せない。むしろ文句があるなら何か言ってこいとでも言いたげな顔だ。

琶月
「後来ていないのはヘル?」
ルイ
「あれ、でもヘルさんは大体7時15分くらいには来ますよね?」
ボロ
「寝坊っすかね。もうちょっと待とうっす。」

・・・・それから15分。

20分。


ついには30分が経過し8時になってしまった。
流石に全員お腹が減ってきたのかイライラし始めた。

ディバン
「爆睡しているのか?」
キュピル
「・・・・・おい。流石にいくらなんでも遅すぎる。様子を見に行った方が良いんじゃないのか?」
テルミット
「・・・そんな・・まさか。」
ファン
「様子を見に行きましょう。」

ファンが立ち上がり、ヘルの部屋へと向かっていった。

琶月
「あ、私も行きます!」

その後を私が追う。


・・・。

・・・・・・・・。


ヘルの部屋の前に立つ私とファン。
ファンが前足を出してドンドンと扉をノックした。

ヘル
「ヘルさん、朝ですよ。皆さんお腹を空かせて待っていますから早く起きてください。」

・・・・・・。

返事がない。

琶月
「ヘルさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」
ギーン
「五月蠅い。そいつは防音扉だぞ。貧乳の貴様がいくら叫んだところで聞こえる訳がない。」
琶月
「もう貧乳って言葉には突っかかりませんよ・・・・。それならどうすればいいんですか?」
ギーン
「おい、モノクマ。出てこい。」
モノクマ
「はいは~い。呼びましたか?}
琶月
「(飼いならしているっ!?)」
ギーン
「奴の扉をあけろ。」
モノクマ
「ちょっとちょっと!そんな事出来る訳ないじゃんかー!プライバシーの侵害だよ!!」

全方位に監視カメラを設置しているモノクマだけには言われたくない。

ギーン
「こいつは事件かもしれないんだぞ?中に奴がいなければ殺人事件が起きた可能性が高い。もし密室殺人ならこの鍵を開けない限り永久に事件が起きたことに気づかんぞ?」
琶月
「さ、殺人って・・・そんなの起きてる訳ないじゃないですか!!」

私が両拳を握りしめてギーンに突っかかるが、ギーンは私に目もくれない。

モノクマ
「う~~~~~ん。迷うなぁ・・・。でも、僕が監視下にいるっていう条件でなら開けてあけるよ。」
ギーン
「開けろ。」

モノクマがぽんぽんと両手を叩くと、ヘルの扉の鍵が解錠される音が聞こえた。
ヘルが扉を開け部屋の中に入ると、そこにはヘルの姿はなくただ散らかった部屋がそこにあるだけだった。

琶月
「・・・・ただ散らかっているだけですよね?別に争った跡があるとかそういう訳じゃ・・・・。」
ファン
「ただ散らかっているだけですね。」
琶月
「よかった・・・・。」
ファン
「いえ、よくありません。部屋にヘルさんがいないとなればどこにヘルさんがいるのか分らない事になります。ますます心配になってきました。
皆さんに伝えてきましょう。」

そういうとファンは食堂へと戻っていく。
私も食堂へと戻ろうとしたちょうどその時。ギーンに肩を掴まれた。

琶月
「な、なんですか?」
ギーン
「血の臭いがする。」
琶月
「・・・・じょ、冗談きついですね。」
ギーン
「・・・・こっちだ。」

ギーンはヘルの部屋には入らず、廊下を歩いて行った。
どうやら血の臭いがするのはヘルの部屋からではないらしい。
私は恐る恐るギーンの後をついていくと、そのまま公共浴場の方へと入って行った。

琶月
「・・・・朝風呂ですか?」
ギーン
「臭う。臭うな。」

思わず私は身構えて周囲の臭いを嗅ぐ。

・・・・・・。

血の臭い。


最後に血の臭いを嗅いだのは師匠が死んだときだ。


思わず視界がグラッと揺れ、次に歪みだす。
体が倒れそうになるがぐっと堪える。
ギーンは浴槽への扉を開ける。


そこには驚愕な光景が広がっていた。



ヘルが壁に張り付けにされていた。
両腕に大きな釘が刺さっていて、腕を貫通して浴室の壁に打ち込まれている。
そして心臓にはナイフが一本刺さっており、血を流して死んでいた。



またしても私は叫ばずにはいられなかった。



琶月
「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」









起きてしまった。


また起きてしまったんだ。


絶望の・・・殺人事件が!!!



続く


戻る